レンタルサーバーの移行とDNS
「Webサイトを他のレンタルサーバーに移行するときに、DNSは必ずしも移行しなくてもいいんですよ」というお話。
ご相談内容
先日、お客様より、こんなご相談がありました。
「WebサイトをKDDIホスティングサービスからXSERVERに移行してから、迷惑メールが増えた。なんとかしたい」
詳しくうかがうと、当初は以下のように、すべてKDDIホスティングサービスを使用していたそうです。
サービス | 利用サービス名 |
ドメイン管理 | KDDIホスティングサービス |
DNS | KDDIホスティングサービス |
Web | KDDIホスティングサービス |
メール | KDDIホスティングサービス |
それを、何ヶ月か前に、Webの移行に伴い、ドメイン管理とDNSもXSERVERに移行した、とのこと。
(メールのみ、KDDIホスティングサービスのまま。)
サービス | 利用サービス名 |
ドメイン管理 | XSERVER |
DNS | XSERVER |
Web | XSERVER |
メール | KDDIホスティングサービス |
このとき、KDDIサポートの指示どおり、MXレコードを変更した、とのこと。
おそらく、これにより、KDDIホスティングサービスのスパムメールチェックを通らなくなったので、迷惑メールが増えたのでしょう。
(参考)
・KDDIホスティングサービス スパムメールチェック
http://www.kddi.com/business/cloud/rental-server/s10-50/function/mail-spam/
※スパムメールチェック機能は「KDDI ホスティングサービスのDNS、メールサーバをご利用いただくことが必要です」とのこと。
対処
問題解決のため、KDDIホスティングサービスのスパムメールチェックを利用するよう、ドメイン管理とDNSをXSERVERからKDDIに戻すことにしました。
XSERVERからのドメイン管理、DNSの移行フローは以下がとても参考になりました。
・XSERVERから他社(お名前.com)へ「汎用JPドメイン」の管理を移管する方法
https://hazimaru.jp/1975/
今回の移行フローは、以下のとおりです。
(1) KDDIホスティングサービでDNSレコード設定
・Webサイト用のAレコードをXSERVERのIPアドレスに変更。
(2) XSERVERでドメイン登録者情報、Whois情報を変更
・(なぜか)ドメインの登録者名が「エックスサーバー株式会社」となっており、そのままではドメインを移管できないため、お客様の社名に変更。あわせてWhois情報も変更。お問い合わせフォームから。フォーマットあり。
(3) KDDIホスティングサービスにドメイン移管の依頼
・(4)より先に行わないと、XSERVER側で解約処理ができない。
(4) XSERVERでドメイン管理の解約
・コントロールパネルから、ドメインの解約依頼。
・お問い合わせフォームから、ドメイン移管承認依頼。フォーマットあり。
(5) KDDIホスティングサービスにDNSサーバー移行の依頼
・3営業日以降の「移行日」を指定する。
(6) DNSサーバー移行後、様子見
・Webサーバーとメール送受信に注意する。
・他のドメインのメールアドレスとの間で送受信テストを行う。
(2)(3)(4)のところは、ドメインの移行元と移行先のどちらに依頼するのかがイマイチよくわからず、両サービスのサポート間を行ったり来たりしましたが、最終的には、無事ドメイン管理と、DNSを移行できました。
サービス | 利用サービス名 |
ドメイン管理 | KDDIホスティングサービス |
DNS | KDDIホスティングサービス |
Web | XSERVER |
メール | KDDIホスティングサービス |
また、移行完了後、お客様の迷惑メールが激減したそうで、無事、当初の目的を達成できました。
根本的な原因
もともとの問題は、以前WebサイトをXSERVERに移行したときに、ドメイン管理とDNSもXSERVERに移行してしまったことにありました。
- ドメイン管理
- DNS(ネームサーバー)
- Webサーバー
- メールサーバー
これらはそれぞれ別の機能ですので、何かを移行するときに、必ずしもセットで移行しなければならないものではありません。
※ちなみに、うちは、以下のように全部バラバラです。
サービス | 利用サービス名 |
ドメイン管理 | バリュードメイン |
DNS | Amazon Route 53 |
Web | IDCFクラウド |
メール | さくらのメールボックス |
もし、元のサービスをすべて解約するのであれば、契約管理を一元化するため、まとめて移行してしまったほうがよいでしょう。
ですが、今回のように、メールを継続使用するために、元のKDDIの契約を残したのであれば、ドメイン管理とDNSもKDDIのままにしておき、DNSレコードをお客様ご自身で編集して、Web用のAレコードだけXSERVERのIPアドレスに変更するのが正解でした。
そうすれば、引き続き、KDDIホスティングサービスのスパムメールチェックサービスを利用できたのです。
では、お客様はなぜ、Webサイトを移行するときに、ドメイン管理とDNSをXSERVERに移行してしまったのでしょう?
これは、XSERVERのサーバー移転手順に、「ネームサーバーの変更」が含まれているからでしょう。
・サーバー移転手順 | レンタルサーバー【エックスサーバー】
https://www.xserver.ne.jp/order/order_transfer_server.php
※ドメインの移管については、オプションのような記載ですが、一緒に移管したほうがよさそう、という判断になったのでしょう。
XSERVERに限らず、多くのレンタルサーバーのサーバー移転手順には、「DNS(ネームサーバー)も合わせて移行する」よう記載があります。
「なぜDNS(ネームサーバー)も合わせて移行する必要があるのか?」については、その理由を明確に説明しているレンタルサーバーサービスは見たことがありません。
おそらく、レンタルサーバー業者が、Webサーバーに不具合対応やメンテナンスを行うときに、WebサーバーのIPアドレスが変更となるような対処を行った場合、DNSレコードを業者のほうで変更できる(=利用者側は何もしなくてもよい)、からでしょう。
レンタルサーバーの利用者は、インターネットやネットワーク、サーバーのことにそれほど詳しくない方が多い(だからこそレンタルサーバーを使う)、ということもあり、「DNSのAレコードにIPアドレスを設定してください」とは言いにくい、説明しにくい面もありますね。
ただ、外部のDNSサービスを使用している利用者もある程度はいるはずですから、「WebサーバーのIPアドレスを変更する」というような影響範囲の大きい対処は、よほどのことがない限り、実施しないはずです。
ですが、もしそのような対処を行った場合は、「他社DNSを使用している場合は、AレコードのIPアドレスを変更してください」という案内は必ず行います。
例えばこんな感じ。
(参考)
・ヘテムル – ftp130.heteml.jpをご利用のお客様へのご案内
https://heteml.jp/integration/detail/no/130/
このような案内を受けて、利用者が自分でDNSレコードを編集する必要があります。
おわりに
「自分でDNSレコードを編集できるのであれば、Webサイトを他のレンタルサーバーに移行するときに、DNSは必ずしも移行しなくてもいいんですよ」というお話でした。
本題とは少しずれますが、KDDIホスティングサービスが採用しているスパムメールチェック「アイアンポート」はとても優秀なようですので、迷惑メールでお困りの方は、「アイアンポート」を採用しているレンタルサーバーやメールサービスを検討するとよいと思います。
(他にもたくさん、同様のシステムがあるかもしれませんが。)
KDDIホスティングサービスは、すでに新規契約が終了となっていますが、同じKDDIのレンタルサーバーサービスCPIにも、「アイアンポート(IRONPORT)」によるウイルスチェックサービスがあるようです。
・アイアンポート – CPIレンタルサーバー
https://www.cpi.ad.jp/shared/detail/ironport.html