IaaSクラウドサーバーのベンチマーク(2016年9月版)

(2016.11.1追記)
さくらのクラウドとAWSのベンチマークテストはSSDディスクを使用したのですが、わかりにくいようでしたので表に追記しました。


2014年4月にJAWS-UG札幌で「IaaSクラウド比較’14」と題して発表してから2年半近く経ちました。

 

このときの発表で、いくつかのIaaSクラウドサーバーのベンチマークテスト結果を公開したのですが、その後、AWSはSSDに対応したEBSをリリースしディスク性能が大きく向上しました。
また、Google Cloud PlatformやMicrosoft Azureもユーザー数を増やしています。

今回は、より多くのIaaSクラウドサービスで、僕がよく使うローエンドのLinuxサーバーに対してベンチマークテストを行ってみたので、その結果をここにまとめます。
2016年9月時点の、最新版ベンチマークテスト結果です。

なお、ベンチマークテストの結果およびサーバーの料金は、2016年9月上旬時点のものです。
性能や料金は変動する可能性がありますので、ご注意ください。

isdベンチマークテストの基本的な条件

ベンチマークテストを行ったIaaSクラウドサービスは次の7つです。

  • ニフティクラウド
  • IDCFクラウド
  • Amazon Web Services (AWS)
  • Google Cloud Platform (GCP)
  • さくらのクラウド
  • Cloudn
  • Microsoft Azure

テスト条件は次のとおりです。

  • 計測日は2016年9月5日~8日
  • ベンチマーク計測対象のサーバースペックは、各サービスの1vCPUメモリ2GB、1vCPUメモリ4GB、2vCPUメモリ4GBのサーバー。なければそれに近いメモリサイズのサーバーを選択。
  • 使用リージョンは、東日本のリージョンのできるだけ新設のリージョン。GCPは日本国内にリージョンがないので、Asia Pacificリージョン(台湾)。
  • 計測対象のサーバーOSはCentOS 7。AWSのみAmazon Linux 2016.03.03(HVM)。
  • ベンチマークツールは、サーバー(CPU)性能計測のunixbench、ディスク性能計測のdbench
  • 計測対象のディスクは永続ストレージ。選択できればSSDとする。ディスクサイズは各クラウドサービスの管理画面でサーバー作成するときのデフォルトサイズ。
  • 表やグラフの「月額料金」は1ヶ月継続起動した場合の税抜料金で、ディスクの料金を含む。
  • サーバーは新規起動後、ベンチマークテストの実施に必要な最低限の設定を行い、Apache, MySQL等のアプリケーション向けサービスは起動しない。
  • テスト終了後は、各サーバーでOSを再起動してもう一度同じテストを行い、結果が極端に違わないことを確認した。

ベンチマークテストの結果は、1CPUと2CPUのCPU数別に掲載します。

isd1CPUサーバーのベンチマークテスト結果

1CPUサーバー:テスト対象サーバーの情報

サーバー    リージョン
ゾーン
スペック OS 月額料金
(税抜)  
ニフティクラウド
small2 
東日本
east-31
1vCPU,メモリ2GB,
ディスク30GB
CentOS 7.1 17,280円
ニフティクラウド
e-small2 
東日本
east-31
1vCPU,メモリ2GB,
ディスク30GB
CentOS 7.1 8,700円
IDCFクラウド
S2
東日本
newton
1vCPU,メモリ2GB,
ディスク15GB
CentOS 7.2 1,700円
AWS EC2
t2.small
東京
ap-northeast-1c 
1vCPU(burst), メモリ2GB,
ディスク8GB(gp2/SSD)
Amazon Linux AMI 
2016.03.3 (HVM) 
$29.28
GCP Compute Engine 
n1-standard
ASIA
asia-east1-c
1vCPU,メモリ3.75GB, 
ディスク10GB(SSD)
CentOS 7 $29.81
さくらのクラウド
1コア2GB
石狩第2 1vCPU,メモリ2GB,
ディスク20GB(SSD)
CentOS 7.2 2,381円
Cloudn FLATタイプ
Compute プランv1 
東日本
jp-e1b
1vCPU,メモリ2GB,
ディスク15GB
CentOS 7.1 3,400円
Microsoft Azure
Virtual Machine F1S
東日本 1vCPU,メモリ2GB,
ディスク30GB(SSD)
CentOS-based 7.2
(OpenLogic)
9,217円
Microsoft Azure
Virtual Machine A1
東日本 1vCPU,メモリ2GB,
ディスク30GB(SSD)
CentOS-based 7.2
(OpenLogic)
6,270円

 

※AWS EC2 t2.smallは、1時間あたり12分のCPUクレジットによるバースト制限あり。
※AWS, GCP, Mirosoft Azureは、ネットワーク転送量課金あり。IDCFクラウドは、In/Out合計3,240GB/月まで無料。ニフティクラウドは、In/Out合計10TBまで無料。
※Microsoft AzureはディスクI/O課金あり。A1のディスクは実際に使用した分だけ課金とのことで、80%使用と想定。F1Sのディスクは、Premium(SSD)を選択し、Premium Storage P10の料金を適用。

1CPUサーバー:サーバー性能(CPU性能)unixbenchの結果

unixbenchは、unixbench Indexテストのスコアを掲載します。

サーバー 月額料金(税抜) single cpu 
index score 
IDCFクラウド
S2
1,700円 927.6
Cloudn
FLATタイプ Compute v1
3,400円 974.3
さくらのクラウド
1コア2GB (SSD)
2,381円 1280.1
GCP
Compute Engine n1-standard (SSD)
$29.81 1542.7
Microsoft Azure
Virtual Machine A1
6,270円 571.0
Microsoft Azure
Virtual Machine F1S (SSD)
9,217円 1581.1
ニフティクラウド
e-small2
8,700円 1022.4
ニフティクラウド
small2
17,280円 1853.5
AWS
EC2 t2.small (gp2/SSD)
$29.28 1866.4

 

グラフはこちら。


 

1CPUサーバー:ディスク性能 dbenchの結果

dbenchは、同時接続1と4で10分間計測し、スループット値(MB/sec)と、参考までに最大レイテンシ(msec)を掲載します。

  • スループット(MB/sec)
サーバー 月額料金(税抜) 同時接続1  同時接続4 
Microsoft Azure
Virtual Machine A1
6,270円 14.409 51.728
Microsoft Azure
Virtual Machine F1S (SSD)
9,217円 81.108 144.026
Cloudn
FLATタイプ Compute v1
3,400円 89.541 151.099
さくらのクラウド
1コア2GB (SSD)
2,381円 82.017 189.141
GCP
Compute Engine n1-standard (SSD)
$29.81 211.512 246.521
AWS
EC2 t2.small (gp2/SSD)
$29.28 138.167 282.740
IDCFクラウド
S2
1,700円 333.696 482.627
ニフティクラウド
e-small2
8,700円 478.673 490.630
ニフティクラウド
small2
17,280円 509.455 841.529

 

グラフはこちら。


 

  • 最大レイテンシ(msec)
サーバー 月額料金(税抜) 同時接続1  同時接続4 
Microsoft Azure
Virtual Machine A1
6,270円 1215.470 1020.970
Microsoft Azure
Virtual Machine F1S (SSD)
9,217円 988.97 4061.559
Cloudn
FLATタイプ Compute v1
3,400円 1515.55 979.844
さくらのクラウド
1コア2GB (SSD)
2,381円 123.998 525.903
GCP
Compute Engine n1-standard (SSD)
$29.81 131.630 3405.584
AWS
EC2 t2.small (gp2/SSD)
$29.28 100.610 665.913
IDCFクラウド
S2
1,700円 51.212 219.486
ニフティクラウド
e-small2
8,700円 144.390 272.109
ニフティクラウド
small2
17,280円 29.833 49.615

 

グラフはこちら。


 

isd2CPUサーバーのベンチマークテスト結果

2CPUサーバー:テスト対象サーバーの情報

サーバー    リージョン
ゾーン
スペック OS 月額料金
(税抜)  
ニフティクラウド
medium4 
東日本
east-31
2vCPU,メモリ4GB,
ディスク30GB
CentOS 7.1 33,400円
ニフティクラウド
e-medium4 
東日本
east-31
2vCPU,メモリ4GB,
ディスク30GB
CentOS 7.1 15,000円
IDCFクラウド
M4
東日本
newton
2vCPU,メモリ4GB,
ディスク15GB
CentOS 7.2 9,500円
AWS EC2
c4.large
東京
ap-northeast-1c 
2vCPU, メモリ3.75GB,
ディスク8GB (gp2/SSD)
Amazon Linux AMI 
2016.03.3 (HVM) 
$97.36
AWS EC2
t2.medium
東京
ap-northeast-1c 
2vCPU(burst), メモリ4GB,
ディスク8GB (gp2/SSD)
Amazon Linux AMI 
2016.03.3 (HVM) 
$58.56
GCP Compute Engine 
n2-standard
ASIA
asia-east1-c
2vCPU,メモリ7.5GB, 
ディスク10GB(SSD)
CentOS 7 $52.80
さくらのクラウド
2コア4GB
石狩第2 2vCPU,メモリ4GB,
ディスク20GB (SSD)
CentOS 7.2 4,900円
Cloudn FLATタイプ
Compute プランv2 
東日本
jp-e1b
2vCPU,メモリ4GB,
ディスク15GB
CentOS 7.1 6,200円
Microsoft Azure
Virtual Machine F2S
東日本 2vCPU,メモリ4GB,
ディスク30GB(SSD)
CentOS-based 7.2
(OpenLogic)
16,275円
Microsoft Azure
Virtual Machine A2
東日本 2vCPU,メモリ4GB,
ディスク30GB(SSD)
CentOS-based 7.2
(OpenLogic)
12,417円

 

※AWS EC2 t2.mediumは、1時間あたり24分のCPUクレジットによるバースト制限あり。
※AWS, GCP, Mirosoft Azureは、ネットワーク転送量課金あり。IDCFクラウドは、In/Out合計3,240GB/月まで無料無料。ニフティクラウドは、In/Out合計10TBまで無料。
※Microsoft AzureはディスクI/O課金あり。A2のディスクは実際に使用した分だけ課金とのことで、80%使用と想定。F2Sのディスクは、Premium(SSD)を選択し、Premium Storage P10の料金を適用。

2CPUサーバー:サーバー性能(CPU性能)unixbenchの結果

unixbenchは、unixbench Indexテストのsingle cpuとmulti cpuのスコアを掲載します。

サーバー 月額料金(税抜) single cpu 
index score 
multi cpu 
index score 
Cloudn
FLATタイプ Compute v2
6,200円 866.7 1903.7
GCP
Compute Engine n2-standard (SSD)
$52.80 1237.9 1955.6
さくらのクラウド
2コア4GB (SSD)
4,900円 1436.8 2312.6
Microsoft Azure
Virtual Machine A2
12,417円 638.9 1024.3
Microsoft Azure
Virtual Machine F2S (SSD)
16,275円 1474.2 2528.2
IDCFクラウド
M4
9,500円 1629.6 2519.7
AWS
EC2 t2.medium (gp2/SSD)
$58.56 1502.4 2781.2
AWS
EC2 c4.large (gp2/SSD)
$97.36 1689.9 2593.7
ニフティクラウド
e-medium4
15,000円 1677.0 1771.3
ニフティクラウド
medium4
33,400円 1832.1 3173.7

 

グラフはこちら。


 

2CPUサーバー:ディスク性能 dbenchの結果

dbenchは、同時接続1と4で10分間計測し、スループット値(MB/sec)と、参考までに最大レイテンシ(msec)を掲載します。

  • スループット(MB/sec)
サーバー 月額料金(税抜) 同時接続1  同時接続4 
Microsoft Azure
Virtual Machine A2
12,417円 12.185 41.857
Microsoft Azure
Virtual Machine F2S (SSD)
16,275円 84.247 148.129
さくらのクラウド
2コア4GB (SSD)
4,900円 70.288 183.131
Cloudn
FLATタイプ Compute v2
6,200円 107.999 204.709
GCP
Compute Engine n2-standard (SSD)
$52.80 198.040 240.348
AWS
EC2 t2.medium (gp2/SSD)
$58.56 139.753 313.355
AWS
EC2 c4.large (gp2/SSD)
$97.36 214.051 534.415
IDCFクラウド
M4
9,500円 378.249 1043.390
ニフティクラウド
e-medium4
15,000円 499.427 920.965
ニフティクラウド
medium4
33,400円 495.727 1273.000

 

グラフはこちら。


 

  • 最大レイテンシ(msec)
サーバー 月額料金(税抜) 同時接続1  同時接続4 
Microsoft Azure
Virtual Machine A2
12,417円 1060.992 1470.100
Microsoft Azure
Virtual Machine F2S (SSD)
16,275円 339.822 1860.640
さくらのクラウド
2コア4GB (SSD)
4,900円 215.391 1033.644
Cloudn
FLATタイプ Compute v2
6,200円 279.499 1631.412
GCP
Compute Engine n2-standard (SSD)
$52.80 34.597 3400.095
AWS
EC2 t2.medium (gp2/SSD)
$58.56 23.571 597.892
AWS
EC2 c4.large (gp2/SSD)
$97.36 20.745 86.96
IDCFクラウド
M4
9,500円 48.723 251.564
ニフティクラウド
e-medium4
15,000円 23.237 246.015
ニフティクラウド
medium4
33,400円 23.258 23.885

 

グラフはこちら。


 

isd性能と料金の比較評価

以上のベンチマークテストの結果から、CPU性能、ディスク性能、月額料金の独断の評価を比較表にまとめてみました。

マークの意味は、以下のとおりです。
月額料金は、安いほどよい、という意味になります。

☆ – ずば抜けてよい
◎ – すごくよい
○ – よい
△ – もう少し
× – 厳しい

  • 1CPUサーバーの比較評価
サーバー CPU性能  ディスク性能  月額料金 
Microsoft Azure
Virtual Machine A1
×
Microsoft Azure
Virtual Machine F1S (SSD)
Cloudn
FLATタイプ Compute v1
さくらのクラウド
1コア2GB (SSD)
GCP
Compute Engine n1-standard (SSD)
AWS
EC2 t2.small (gp2/SSD)
IDCFクラウド
S2
ニフティクラウド
e-small2
ニフティクラウド
small2
×

 

  • 2CPUサーバーの比較評価
サーバー CPU性能  ディスク性能  月額料金 
Microsoft Azure
Virtual Machine A2
×
Microsoft Azure
Virtual Machine F2S (SSD)
さくらのクラウド
2コア4GB (SSD)
Cloudn
FLATタイプ Compute v2
GCP
Compute Engine n2-standard (SSD)
AWS
EC2 t2.medium (gp2/SSD)
AWS
EC2 c4.large (gp2/SSD)
IDCFクラウド
M4
ニフティクラウド
e-medium4
ニフティクラウド
medium4
×

 

isdクラウドサービスごとのコメント

今回のテスト結果やテストの際に気づいたこと、テスト以外の特徴についてコメントします。

ニフティクラウド

ニフティクラウドは、当初は高スペックモデルのtype-h(今回でいうとsmall2, medium4)のみリリースされ、その後、高パフォーマンスモデルのtype-e(e-small2, e-medium4)がリリースされました。

今回のベンチマークテストでは、type-hは料金が高いけど圧倒的な高性能、type-eは料金がやや高めで、性能はまずまずよい、という結果でした。
どちらのタイプでもディスクのレイテンシ値が非常に小さいのは大きな特徴といえます。

e-medium4のunixbenchの結果で、single cpuとmulti cpuでスコアがほとんど変わらないのは、2014年10月に計測したときと同様で、これは他クラウドサービスでは見られない傾向です。
マルチコアで動作するときはCPUクロックが下がるようなイメージでしょうか。

(参考)
・ニフティクラウド新サーバータイプType-eのベンチマーク
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20141003/nifty_cloud_type-e_benchmark.html

ちなみに、type-eとtype-hでは、

  • small2 (type-h) – 1vCPU, メモリ2GB, 月額17,280円
  • e-medium4 (type-e) – 2vCPU, メモリ4GB, 月額15,000円

のように、type-hのサーバーと、CPUとメモリがその2倍のtype-eのサーバーの月額料金はだいたい同じで、type-eのほうが少し安いような価格設定となっています。
ベンチマークテストの結果では、small2よりはe-medium4のほうが少し値がよいので、type-hのサーバーを使うなら、CPUとメモリがその2倍のtype-eのサーバーを選択したほうがお得かもしれません。
主にシングルスレッドのアプリケーション向けのサーバーであれば、1CPUあたりの性能がよいtype-hを使ったほうがよいのでしょうが。

Amazon Web Services, EC2

AWSは、2014年3月時点の調査では、EBSストレージがハードディスクタイプのMagneticしかなかったのでディスク性能があまりよくなかったのですが、SSDタイプのgp2がリリースされてから、ディスク性能が格段によくなり、安定するようになった印象があります。
それが今回のテスト結果にも表れました。
度重なる値下げもあり、コストパフォーマンスがよいといえます。

t2.mediumとc4.largeを比べると、CPU性能はそれほど変わりませんが、ディスク性能はc4.largeのほうがよいです。
これは、c4シリーズはデフォルトで「EBS最適化インスタンス」となっており、ストレージアクセス専用の帯域幅が確保されているためでしょう。

他クラウドサービスでも同様ですが、クラウド上の仮想サーバーが使用する仮想ディスクへのアクセスは、巨大なストレージサーバー群へのストレージネットワーク経由でのアクセスとなります。
このため、「サーバーのディスク性能がよい、安定している」ということは、「ストレージネットワークの制御が優れている」ということを意味すると思います。

なお、t2シリーズはCPUバーストが効いてのこの結果ですので、バーストが効かないと一気に性能が落ちます。
通常のWebサーバーでしたらt2シリーズでも問題ないと思いますが、ちゃんとバーストが効いているかどうかの確認は必要でしょう。

IDCFクラウド

IDCFクラウドは、以前から「サーバー料金が安いのに性能がよい」というイメージでしたが、今回もそのとおりの結果となりました。
とくにディスクのスループット値がよく、レイテンシが小さいのは大きな特徴だと思います。

1vCPU, メモリ2GBのS2は、当初のリリース時より約半額に値下げされて、このスペックのサーバーとしては驚異的な月額1,700円で使用できます。
僕も、アクセスが少ないWordPress WebサイトをS2 1台で構築・運用する事例が多くあり、おすすめです。

個人的には、IDCFクラウドは、サーバー以外の機能よりもサーバーのコストパフォーマンスや安定性が一番のウリだと考えています。
アクセスの多いWebサイト向けの複数台構成の場合にも、よりおすすめ・採用しやすくなるために、早くマネージドRDBをリリースしてくれるとうれしいです。

Google Cloud Platform, Compute Engine

GCPは、CPU性能がよく、ディスク性能はまずまず、という結果でした。
dbenchの結果で、同時接続が増えたときの最大レイテンシ値が大きいのは少し気になりますが、これはdbenchのOperationのうち、Flushのときのみ極端に大きな値となったためです。
それ以外のOperationのときは200msec以内の小さい値でしたので、大きな問題にはならないのではないかと思います。
また、今回テストしたクラウドサービスの中では、サーバーの新規起動が一番速く、30秒から40秒で完了し、SSHログインできる状態となりました。

サーバー料金については、スタンダードタイプは1CPUあたりのメモリサイズが3.75GBとメモリが多めの割には、他クラウドサービスと比べて、サーバー料金が安いです。
また、サーバースペックは、スタンダードタイプのほか、CPU数が多めのハイCPUタイプ、メモリが多めのハイメモリタイプがあり、さらにCPUとメモリは2CPU単位、0.5GB単位でカスタマイズ可能です。

2016年内に日本国内リージョンの開設が予定されており、今後日本のユーザーが大きく増えていくことが予想されます。

さくらのクラウド

さくらのクラウドは、サーバー料金が安く、CPU性能はよいのですが、ディスク性能(SSD)が他クラウドサービスと比べるとあまりよくないという結果でした。
DBアクセスがやや多いなど、ディスク性能がボトルネックとなる場合は、ディスクアクセスを少なくするような工夫が必要となるかもしれません。
あるいは、さくらインターネットでは、他のサービスと組み合わせてプライベートネットワークを構築できる「ハイブリッド接続」という機能があります。
Webサーバーは「さくらのクラウド」を使用し、DBサーバーは専用物理サーバーのレンタルサービス「さくらの専用サーバー」を使用してプライベートネットワークを組む、という選択肢もあるでしょう。

サーバーのCPU数、メモリを細かく選択できるのと、ネットワーク転送量課金がないのも大きな特徴です。

Microsoft Azure, Virtual Machine

Azureは、2014年4月に計測したときはディスク性能がすごくよくなくて、これはWindows Serverはわからないけど、少なくともLinuxサーバーで使用するのは難しいな、という印象がありました。

(参考)
・Microsoft AzureでLinux仮想マシンのベンチマーク
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20140419/azure_linux_benchmark.html

今回のベンチーマークテストでも、SSDを使わない、Aシリーズでは、前回と同じようにディスク性能が非常によくないという結果となりました。
SSD永続ストレージを使用できるFSシリーズのほうは、少しよい値となりましたが、レイテンシはやや大きい値です。
また、今回テストしたクラウドサービスの中では、サーバーの新規起動が一番遅く、SSDのFSシリーズで4分ぐらい、Aシリーズで7分ぐらいかかりました。
これはディスク性能が影響しているのでしょうか。

Azureでサーバーを使用し、ある程度ディスクアクセスが見込まれる場合は、Aシリーズ、Dシリーズではなく、SSD永続ストレージを使用できる、FSシリーズ、DSv2シリーズを使ったほうがよさそうです。
また、FSシリーズのCPU性能はよいので、memcached等のデータキャッシュのしくみを導入してディスクアクセスを極力減らすと、マシンパワーを発揮できますね。

特に料金が安いというわけでもないので、現時点では、Linuxサーバーで使用する場合は、Azureにしかない便利な機能と組み合わせる場合にのみ、選択肢となるのかなと思います。

Cloudn, FLATタイプ

Cloudnは、サーバー料金が安いのはよいのですが、CPU性能はまずます、ディスク性能はあまりよくないという結果でした。
今回計測したFLATタイプよりも、後発のVPC OpenNW, VPC ClosedNWタイプのほうが性能がよいのかもしれません(今回は計測していません)。

CloudStackのデフォルトと思われる管理画面も、今となっては他クラウドサービスと比べるとやや使いにくい印象があります。
それでも、ネットワーク転送量課金がないのは魅力的ですし、NTTブランドイメージの安定感、安心感はありますね。
僕は3年半ぐらい、一番安い月額450円のサーバーをずっと使っていますが、トラブルはネットワーク障害で1時間ぐらいアクセスできなくなった1回だけです。

isdまとめ

IaaSクラウドサービス7社の、ローエンド1CPU, 2CPUのサーバーに対してベンチマークテストを行い、その結果をまとめました。
サービスによって、とくにディスク性能の違いが大きく出ました。
今回はローエンドのサーバーのみのテストでしたが、よりスペックのよいサーバーだとまた違う結果となるかもしれません。

この結果は、unixbenchとdbenchというベンチマークテストツールによる結果にすぎず、各社クラウドサービスの優劣をつけるためのものではなく、開発したアプリケーションやシステムの性能がこのとおりとなるわけではありません。
それでも、オンプレミスからクラウドへの移行、クラウドから別のクラウドへの移行の際に、サーバースペックを同じにしても、システムのパフォーマンスが落ちる/上がる可能性があることは注意する必要があるでしょう。
といっても、机上でサーバースペック、サイジングの検討に時間をかけすぎたり、いろいろなクラウドにシステムを構築して比較したりするのは、もったいないと思います。
本番稼働の前にシステムの性能試験を行ってみて、あるいは本番運用を始めてみて、スペックが足りなければ、クラウドですからサクっとCPUやメモリを増やせばよいのです。
また、クラウドサービスによっては、ディスクタイプの変更やI/O上限を増やすことでディスク性能を向上させる手段が用意されていることもあります。

クラウドサービスによってサーバー性能に違いがある、ということを頭に入れつつ、スペック変更やデータキャッシュのしくみの導入などで、柔軟に対応していくとよいと思います。

isd(参考)テスト費用

(2016.10.14追記)
参考までに、今回のテストに要したサーバー費用を記載します。

サービス  サーバー数  テスト費用(税抜)  備考 
ニフティクラウド  4 492円
Amazon Web Services  3 $0.53 c4.largeはスポットインスタンスを使用。
EBSボリューム分は無料利用枠で$0。
IDCFクラウド  2 81円
Google Cloud Platform  2 $0.82
さくらのクラウド  2 137円
Cloudn  2 64円
Microsoft Azure  6 不明 試用期間20,500円分のクレジットで無料。
試用期間が終わったため?料金情報が消えた。

 

(2016.10.14追記ここまで)

 

(関連記事)
・IaaSクラウドのベンチマークテスト(2020年版)
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20201207/iaas_cloud_benchmark_2020.html

・Amazon Lightsailのベンチマーク
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20161208/aws_lightsail_benchmark.html

・JAWS-UG札幌で発表しました。~IaaSクラウド比較’14
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20140414/jaws-ug_sapporo_iaascloud14.html

・新サービスIDCFクラウドのベンチマーク~IDCF従来のサービスやニフティクラウドType-eとの比較
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20141031/idcfcloud_benchmark_vs_nifty.html

 

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