IaaSクラウドのdbenchディスクベンチマーク比較
2013年、いくつかのIaaSクラウドを使う機会があったので、メモリ1GB-7GBあたりのサーバーの、dbenchによるディスクベンチマーク結果を比較します。
※ディスクベンチマークツールdbenchについては、下記のエントリーにまとめました。
ディスクベンチマークツールdbench
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20131203/dbench.html
ベンチマークをとったIaaSクラウドは下記のとおりです。
- Amazon Web Services (AWS)
- IDCフロンティアクラウド セルフタイプ
- Cloudn
- さくらのクラウド
- さくらのVPS
※「さくらのVPS」はクラウドではなくVPSサービスですが、安定しており、コストパフォーマンスに優れたサービスですので比較対象として載せました。
ベンチマークの条件
- 2013年4月~11月に計測
- OSはCentOS 6.4もしくはAmazon Linux 2013.(03,09) EBS-Backed
- サーバー設定は初期状態から、ユーザー作成、スワップ領域作成などの基本設定を行った程度
- Web, DBサービスは起動していない状態
- Amazon Linuxはデフォルトでファイルシステムのnoatimeオプションが有効となっている
ベンチマークの結果
各IaaSクラウドのベンチマーク結果、スループット値は下図のとおりです。
同時実行数は1, 4としました。
考察
さくらのVPS > さくらのクラウド(SSD), IDCフロンティアクラウド > Cloudn, AWS > さくらのクラウド(標準)
という結果となりました。
さくらのVPS、クラウド
「さくらのVPS」は圧倒的なパフォーマンスですね。
下手すると、安い物理サーバーよりよい値かもしれません。
SSDではなく標準タイプ(HDD)でもあまり変わりません。
「さくらのクラウド」については、SSDタイプは「さくらのVPS」の半分以下の値となりました。
また、標準タイプはとっても遅いです。
さくらはVPSからクラウドへの移行(マイグレーション)機能をリリースしましたが、移行前のディスクサイズが100GBを超えると、クラウド側では標準タイプしか選べません。
移行することでシステムのパフォーマンスが落ちる可能性があることに注意が必要です。
ただし、移行時にディスクサイズを縮小する機能がリリース予定、と以前さくらインターネットの田中社長が「Java Festa in 札幌 2013」で話していました。
さくらについては、ほかのサービスで見られなかった特徴がもう一点。
「同タイプのサーバーであれば、VPS/クラウド, SSD/標準(HDD)を問わず、毎回ほぼ同じ値となる」
ということがわかりました。
これは、性能が安定するよう、ストレージネットワークのところで何らかの制限をかけているのかな、と想像していますが、どうでしょう。
さくらインターネットのエンジニアさんにお会いする機会があれば、聞いてみたいですね。
IDCフロンティアクラウド
IDCフロンティアクラウドは、「さくらのクラウド(SSD)」と同等の値が出ており、同時実行数4では、「さくらのクラウド(SSD)」を上回っています。
サーバー単体の料金が比較的安価で、ディスクアーカイブなどの機能もそろっているので、Web、アプリケーション、DBをサーバー1台に収めてややディスクに負荷をかけるようなケースでは特におすすめのサービスといえます。
Amazon Web Services
AWSのEBSディスクについては、他のクラウドサービスに比べて明らかに遅い、という結果となりました。
低スペックのインスタンスタイプほどネットワーク性能が遅いためEBSディスクも遅くなります。
オンプレミスや「さくらのVPS」環境からそのまま移行すると、システムの性能が落ちる(=ディスクが速いときには気づかなかった問題が顕在化する)ことがあるので注意が必要です。
ただし、ディスクサイズを増やすと速くなる、というオフィシャル情報があります。
また、ストレージアクセス専用のネットワークを利用することで性能を上げる PIOPS, EBS-Optimized オプションが用意されています。
EBSについては、アマゾンさんによるこちらの資料に詳しい説明があります。
AWSマイスターシリーズReloaded Elastic Block Store
https://www.slideshare.net/AmazonWebServicesJapan/aws-16148274
まとめ
いくつかのIaaSクラウドとVPSのサーバーについて、dbenchを使用したディスクベンチマークの結果をまとめました。
ディスクが速いからよい、遅いからダメ、ということではなく、各サービスのさまざまな特徴のうちのひとつとして参考にしていただければと思います。
前のブログエントリーにも記載しましたが、ディスク性能がよくないということを把握できていれば、サーバーのメモリを増やして
- memcachedなどのキャッシュツールを使用する
- DBのパラメータでバッファプールに大きな値を割り当てる
- DBのインデックスを適切に設定する
など、「ディスクアクセスを少なくするようチューニングを徹底する」という戦略が立てられますね。
(関連記事)
・IaaSクラウドのサーバーベンチマーク比較
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20131204/cloud_server_benchmark.html
・JAWS-UG札幌で発表しました。~IaaSクラウド比較’14
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20140414/jaws-ug_sapporo_iaascloud14.html