新サービスIDCFクラウドのベンチマーク~IDCF従来のサービスやニフティクラウドType-eとの比較
2014年10月15日、IDCフロンティアのIaaSサービスが全面的に刷新され、新しく「IDCFクラウド」がリリースされました。
(参考)IDCフロンティア、よりパワフルな新クラウドサービス「IDCFクラウド」を提供開始 – CNET Japan
https://japan.cnet.com/release/30083616/
さっそく、僕がよく使うローエンドのサーバーのベンチマークをとり、従来の「IDCフロンティアセルフクラウド」やほぼ同時期にリリースされた「ニフティクラウドType-e」と比較してみました。
従来の「IDCフロンティアセルフクラウド」との機能面の違いや、従来のサービスからのサーバー移行方法については、別記事を参照してください。
・新サービスIDCFクラウド~従来の「IDCフロンティアセルフクラウド」との違い
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20141031/idcfcloud.html
以降、わかりやすいようベンチマーク結果の中では、IDCフロンティアの新サービス「IDCFクラウド」を「新IDCF」、従来のサービス「IDCフロンティアセルフクラウド」を「旧IDCF」と記載します。
ベンチマークテストの基本的な条件
- ベンチマーク計測対象のサーバースペックは、各サービスの1vCPUメモリ2GB、1vCPUメモリ4GB、2vCPUメモリ4GB、4vCPUメモリ8GBの4種類
- 使用ゾーンは、旧IDCFが東日本リージョンjp-east-t1v、新IDCFが東日本リージョンtesla、ニフティクラウドが東日本リージョンeast-14
- 計測対象のサーバーOSは、CentOS 6.5 (64bit)
- ベンチマークツールは、サーバー(CPU)性能計測のunixbench、ディスク性能計測のdbench
- 計測日は2014年10月23日、10月29日
表やグラフの「月額料金」は税抜の金額で、標準ディスクの料金を含みます。
標準ディスクのサイズは、新旧IDCFが15GB、ニフティクラウドは30GBです。
ニフティクラウドは、サーバータイプ名に e- がついているほうが高コストパフォーマンスモデルの「Type-e」、ついていないほうが高スペックモデルの「Type-h」です。
なお、unixbenchについては、IDCフロンティア技術ブログで「Execl Throughputを除外すべき」という記事がありましたが、今回の計測では「Execl Throughputを除外する/しない」でスコアの傾向の違いが見られなかったので、「Execl Throughputを除外しない」いつもと同じunixbench Indexテストのスコアを記載します。
(参考)
IDC Frontier Engineers’ Blog 新しくなったIDCFクラウドの性能と注意点
http://www.idcf.jp/blog/cloud/unixbench3/
IDCF新旧サービスの比較
IDCFの新旧サービスの、同じサーバータイプの性能を比較します。
サーバー性能(CPU性能)unixbench比較
サーバータイプ、スペック | 月額料金(税抜) | single cpu | multi cpu |
新IDCF S2 0.8GHz x 1vCPU, メモリ2GB | 3,500円 | 487.6 | – |
旧IDCF S2 1.6GHz x 1vCPU, メモリ2GB | 5,926円 | 817.6 | – |
新IDCF S4 2.4GHz x 1vCPU, メモリ4GB | 5,600円 | 1485.9 | – |
旧IDCF S4 1.6GHz x 1vCPU, メモリ4GB | 10,783円 | 803.2 | – |
新IDCF M4 2.6GHz x 2vCPU, メモリ4GB | 9,500円 | 1680.1 | 2636.7 |
旧IDCF M4 1.6GHz x 2vCPU, メモリ4GB | 13,831円 | 1300.9 | 1459.0 |
新IDCF L8 2.6GHz x 4vCPU, メモリ8GB | 18,600円 | 1797.3 | 4298.9 |
旧IDCF L8 1.6GHz x 4vCPU, メモリ8GB | 37,113円 | 1460.4 | 2542.9 |
グラフはこちら。
新旧サービスの結果を比べると、S2は新サービスではLightプランに含められ、公表CPUクロックが1.6GHzから0.8GHzと下がっていることが影響したようで、旧サービスよりも低い値となりました。
一方、S4、M4、L8については、旧サービスよりもかなりよい値となりました。
ディスク性能 dbench比較
サーバータイプ、スペック | 月額料金(税抜) | dbench 1 | dbench 4 |
新IDCF S2 0.8GHz x 1vCPU, メモリ2GB | 3,500円 | 113.297 | 148.398 |
旧IDCF S2 1.6GHz x 1vCPU, メモリ2GB | 5,926円 | 134.257 | 214.462 |
新IDCF S4 2.4GHz x 1vCPU, メモリ4GB | 5,600円 | 220.860 | 504.157 |
旧IDCF S4 1.6GHz x 1vCPU, メモリ4GB | 10,783円 | 143.243 | 216.856 |
新IDCF M4 2.6GHz x 2vCPU, メモリ4GB | 9,500円 | 206.034 | 540.338 |
旧IDCF M4 1.6GHz x 2vCPU, メモリ4GB | 13,831円 | 135.834 | 311.575 |
新IDCF L8 2.6GHz x 4vCPU, メモリ8GB | 18,600円 | 214.317 | 623.962 |
旧IDCF L8 1.6GHz x 4vCPU, メモリ8GB | 37,113円 | 127.122 | 288.893 |
グラフはこちら。
傾向としてはunixbenchと同じで、S2は旧サービスのほうがよく、S4、M4、L8は新サービスのほうがかなりよい値となりました。
とくに、同時実行4の新旧サービスの差は大きいです。
ここには記載していませんが、レイテンシは旧サービスは10msec~300msecとばらつきがありますが、新サービスは、ほぼ10msec以内と低い遅延で安定していました。
例えば、アクセス数はそれほど多くないけれども、WordPressなどを使用していてDBが必要なWebサイトの場合、僕はS2をおすすめするケースが多かったのですが、新サービスのS2のこの結果は少し心許ないです。
今後は、S2ではなく、S4をおすすめすることになると思います。
それでも、旧S2(月額6,790円)、新S4(月額5,600円)と、サーバーの料金は従来より安くすみます。
M4、L8については、サーバーの性能が大幅に上がるうえに、月額料金がM4は5,000円以上、L8は18,000円以上安くなるのでかなりお得です。
新IDCFとニフティクラウドの比較
IDCFの新サービスとニフティクラウドType-e(とついでにType-hも)の、CPU数とメモリサイズが同じサーバータイプの性能を比較します。
サーバー性能(CPU性能)unixbench比較
サーバータイプ、スペック | 月額料金(税抜) | single cpu | multi cpu |
新IDCF S2 0.8GHz x 1vCPU, メモリ2GB | 3,500円 | 487.6 | – |
ニフティクラウド e-small2 1vCPU, メモリ2GB | 8,700円 | 915.9 | – |
ニフティクラウド small2 1vCPU, メモリ2GB | 17,280円 | 1807.8 | – |
新IDCF S4 2.4GHz x 1vCPU, メモリ4GB | 5,600円 | 1485.9 | – |
ニフティクラウド e-small4 1vCPU, メモリ4GB | 9,500円 | 918.3 | – |
ニフティクラウド small4 1vCPU, メモリ4GB | 24,200円 | 1796.3 | – |
新IDCF M4 2.6GHz x 2vCPU, メモリ4GB | 9,500円 | 1680.1 | 2636.7 |
ニフティクラウド e-medium4 2vCPU, メモリ4GB | 15,000円 | 1569.4 | 1534.4 |
ニフティクラウド medium4 2vCPU, メモリ4GB | 33,400円 | 1803.0 | 3016.3 |
新IDCF L8 2.6GHz x 4vCPU, メモリ8GB | 18,600円 | 1797.3 | 4298.9 |
ニフティクラウドe-large8 4vCPU, メモリ8GB | 25,000円 | 1787.6 | 2547.1 |
ニフティクラウドlarge8 4vCPU, メモリ8GB | 63,360円 | 1879.2 | 4821.5 |
グラフはこちら。
新IDCFとニフティクラウドを比べると、まず、1vCPUメモリ2GBについては、新IDCF S2はCPUクロックを抑えたLightプランのため、ニフティクラウドType-e、Type-hに比べて60%程度の低い値となりました。
1vCPUメモリ4GB, 2vCPUメモリ4GB, 4vCPUメモリ8GBについては、
ニフティクラウドType-h > 新IDCF > ニフティクラウドType-e
となりました。
なお、ニフティクラウドType-eのe-medium4については、以前計測した際にも発生した「multi-cpuのスコアがsingle-cpuよりわずかに低い値」がまた発生しました。
(参考)ニフティクラウド新サーバータイプType-eのベンチマーク
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20141003/nifty_cloud_type-e_benchmark.html
ディスク性能 dbench比較
サーバータイプ、スペック | 月額料金(税抜) | dbench 1 | dbench 4 |
新IDCF S2 0.8GHz x 1vCPU, メモリ2GB | 3,500円 | 113.297 | 148.398 |
ニフティクラウド e-small2 1vCPU, メモリ2GB | 8,700円 | 287.062 | 379.298 |
ニフティクラウド small2 1vCPU, メモリ2GB | 17,280円 | 289.518 | 615.542 |
新IDCF S4 2.4GHz x 1vCPU, メモリ4GB | 5,600円 | 220.860 | 504.157 |
ニフティクラウド e-small4 1vCPU, メモリ4GB | 9,500円 | 286.522 | 380.985 |
ニフティクラウド small4 1vCPU, メモリ4GB | 24,200円 | 300.971 | 648.73 |
新IDCF M4 2.6GHz x 2vCPU, メモリ4GB | 9,500円 | 206.034 | 540.338 |
ニフティクラウド e-medium4 2vCPU, メモリ4GB | 15,000円 | 285.638 | 664.890 |
ニフティクラウド medium4 2vCPU, メモリ4GB | 33,400円 | 293.892 | 762.183 |
新IDCF L8 2.6GHz x 4vCPU, メモリ8GB | 18,600円 | 214.317 | 623.962 |
ニフティクラウドe-large8 4vCPU, メモリ8GB | 25,000円 | 314.510 | 852.798 |
ニフティクラウドlarge8 4vCPU, メモリ8GB | 63,360円 | 312.293 | 841.666 |
グラフはこちら。
新IDCFとニフティクラウドを比べると、unixbenchと同様、1vCPUメモリ2GBについては、新IDCFはニフティクラウドに比べてかなり低い値となっています。
1vCPUメモリ4GB, 2vCPUメモリ4GB, 4vCPUメモリ8GBについては、
ニフティクラウドType-h > ニフティクラウドType-e > 新IDCF
となりました。
ただし、新IDCFのS4(1vCPUメモリ4GB)については、同時実行4のみ、ニフティクラウド「Type-e」を大きく上回る値となりました。
実は、新IDCFのdbenchスループット値もIaaSの中ではかなりよいほうなのですが、ニフティクラウドのディスクは相当速く、僕がいろいろ試した中でも断トツの値です。
ニフティさんはストレージ性能にこだわっているといえるでしょう。
(参考)IaaSクラウドのサーバーベンチマーク比較
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20131204/cloud_server_benchmark.htm
まとめ
IDCフロンティアから新しくリリースされたIaaSサービス「IDCFクラウド」の主にローエンドのサーバータイプに対してベンチマークをとり、IDCフロンティアの旧クラウドサービスの同タイプのサーバーと性能を比較しました。
また、ほぼ同時期にリリースされた、ニフティクラウドの高コストパフォーマンスモデル「Type-e」および高スペックモデル「Type-h」のCPU数、メモリが同じタイプのサーバーとも性能を比較しました。
その結果、以下のことがわかりました。
- 「IDCFクラウド」は、旧サービスのサーバーに比べて料金は安くなり、かつ性能がよくなった。コストパフォーマンスが大幅にアップしたといえる。
- 「IDCFクラウド」とニフティクラウド「Type-e」を比べると、CPU性能は「IDCFクラウド」のほうがよく、ディスク性能は「Type-e」のほうがよかった。料金は「IDCFクラウド」のほうが安いので、今回のベンチマークテスト条件においては、「IDCFクラウド」のほうがコストパフォーマンスがよいといえる。
- ニフティクラウド「Type-h」は、高価なぶん、もっとも性能がよかった。
- 「IDCFクラウド」のサーバータイプS2はLightプランとなったため、サーバー性能、ディスク性能ともあまりよくない。MySQLなどのDBサーバーを搭載する場合は、S4を使用したほうがよいと思われる。
このベンチマークの結果が、サーバー性能のすべてを表すものではなく、サーバーに搭載するシステムやWebサイトのパフォーマンスに必ずしも比例するわけではありません。
また、IaaSクラウドの選定においては、サーバー性能以外にも、可用性、RDBやVPNなど、必要となる機能の有無、サポートの対応など、さまざまな要素を考慮すべきでしょう。
IaaSクラウドを比較する際のひとつの要素として、参考まで。
(関連記事)
・IaaSクラウドサーバーのベンチマーク(2016年9月版)
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20160921/iaas_cloud_benchmark_201609.html
・新サービスIDCFクラウド~従来の「IDCフロンティアセルフクラウド」との違い
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20141031/idcfcloud.html
・ニフティクラウド新サーバータイプType-eのベンチマーク
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20141003/nifty_cloud_type-e_benchmark.html
・IaaSクラウドのサーバーベンチマーク比較
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20131204/cloud_server_benchmark.htm
・IDCFクラウド 新しくなったS2プランのベンチマーク
https://inaba-serverdesign.jp/blog/20151030/idcfcloud_news2_benchmark.html